喪主を務めた母の葬儀、テーマは「美しく送る」

私の母は15年前に他界しました。父は私が学生のころにすでになくなっていますので、一人息子である私が喪主を務めることになりました。

母の死因はガン。かなり長い闘病でしたし、本人も病気のことを知っていましたので、生前、自分の葬儀についての希望を私に伝えていました。
母の希望は「お葬式はできるだけシンプルに。お金をかける必要はまったくないよ」というものでした。

けれど、実際にかけがえのない母親が亡くなってしまうと、「できるだけのことをしてやりたい」と思うのが人情というもの。そこで「あまりお金をかけず、しかし母を可能な限り美しい姿で送ってやろう」と考えました。

高齢でもあり、長くガンと戦ったものですから、晩年の母は若い頃とは別人のように痩せ、やつれていました。抗がん剤の副作用で、「女の命」である髪も抜けてしまっていました。そこで、「最後だけは一番きれいな姿で」と考えたわけです。

私がこだわった点は3つ。1つは祭壇の花です。
母は花好きで、特にブルー系、紫系の洋花が好きでした。そこで、葬儀社にお願いして、菊は一切使わず、青と紫、白の洋花を使った祭壇を作ってもらったのです。
これはかなり好評で、口うるさい親類からも「思い切った祭壇だけど、こんなきれいな祭壇は見たことがない」とほめられました。

2つ目のこだわりは、遺影です。
ふつうは故人の近影を使うものでしょう。けれど、それでは「美しく送る」というテーマからは外れてしまいます。
そこで、私は母が30代前半、私が子供のころの、母のもっとも美しかった年代の写真を使ったのです。
これも大変異例のことですが、ほめてくれた方が複数いました。

3つめのこだわりは、着物。
母は着物好きで、普段からよく着物を着ていました。形見となった着物もたくさんあります。
私はその中から、その季節に合った着物を選び、棺の中の母の亡骸にかけてやりました。
母はその着物と一緒に旅立ったのです。
自画自賛のようですが、個性的で美しい葬儀になったと思っています。参列者にもおおむね好評でした。